シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
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櫂くんは、調子を取り戻して、張り切って学校に行っている。逆になんか心配な気もする。
『亜紀はオレのだ』とふれまわり『ほかの男はよせつけない』そうだ。
大丈夫だろうか⋯⋯ 大学までの一貫校だから、周りの子達もヤレヤレってかんじなんだろうな。

櫂くんが今後、亜紀ちゃんとこじれない事を祈るよ。


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一子の3歳の誕生日をお祝いしたころ、
菜摘達は新居に引っ越した。

新居は新しく建てたので、弥勒の趣味そのものだ。
一言でシンプル。
すごくお洒落でやはり物も少ない。
男性的な雰囲気なのに、大切な家族を一番に考えた、あたたかい優しさを感じる。
白を基調としたモノトーンで、シックな、フラットな感じだ。

犬にも良い床の素材で、弥勒が考えてる大型犬2、3匹を放し飼い出来るよう考えた。

広い敷地の中だから、開放的に斜面をうまく使って、二階だと思うのに一階だったりと、少し不思議なかんじだ。

外から入れる全面ガラスの広いリビングは広くて形がよく分からないが、柔らかな円形だ。
その真ん中、数段下がったところにキッチンと広い食堂が、同じ空間に丸く円をかいて広がり、その段差を利用してぐるりとベンチになっている。フカフカの洒落たクッションを置きシートも敷き詰められ何人でも座れる棚のような椅子になっている。

一目見た時、菜摘は、すごく広い空間なのに、家族が焚き火に集うみたいなぬくもりに、じわっと心があたたかくなった。

ちょっと隠れ家的なあそび部分も感じる。

リビングは、そのキッチンのまわりにステージのようになっていて、グランドピアノや応接セットもゆったりと広く置いた。パーテーションや、キッチンの棚で所々仕切られたようにもなっているが、ホテルのように全体が広く見渡す事ができる。

天井は高く、丸い形のリビングにそって、大きな大きなドームのようになって、その中心は天窓、そこから自然光が落ち着いた感じに部屋全体に柔らかくそそいでいる。

リビングから出る外は、まるでもう一部屋のように、もちろんバーベキューのセットが作り付けられ、椅子は洒落たクッションでソファーのよう、床はレンガ作りの庭が緑に囲まれていて、しかも敷地の中だから、人目を気にすることもない。

外国風の雰囲気は、小学校、中学校と海外で育った弥勒の環境からくるセンスだろう。

櫂も運転さんに送られなくても、敷地内を歩いて来れるようになった。

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