シークレットベイビー② 弥勒と菜摘


ひとしきり挨拶したころ、


「ミロク! 」


とゴージャスな若い金髪の外国人女性に、弥勒は抱きつかれた。そのまま、ベラベラと英語で話す。

櫂くんも、真横で話すネーティブな英語の迫力に、物珍しそうに女性を見ている。

うん、外国の人だから。

抱きついたり⋯⋯ ボディータッチしたり⋯⋯ チュッとかするんだ⋯⋯ よね。

文化の違いだから。

と思いつつ、笑顔が強張る。


「あら〜弥勒〜久しぶりじゃない? 」


と、続けて可憐なお嬢様に声をかけられる。可憐だけど清楚ではない⋯⋯ 。


「あの時以来ねっ」


と低く思わせぶりな言い方⋯⋯ それから、


「子供が生まれたんですって? 」


と上目遣いに話して、櫂をみて、ギョッとした。


「ヤダ! 信じられない! もう!
弥勒ったら、しょうがないな、浮気はダメじゃない! 」


と憤慨しながら去っていく

(えっ、浮気って⋯⋯ ? )

弥勒が何かを言おうとしたが、運悪くマイクで今日のコンペの結果発表が始まり、おとなしく耳を傾ける。

弥勒はゆっくり座っている。

足首までの少し短くて、細身のパンツとそのジャケットの袖は少しめくりあげてあり、大きな手と手首と腕が、確かにモテる余裕を撒き散らせながら、そんな事は意に介さず良き夫の顔。それが逆に返ってまた女性の目を引く。

だからって、なんなんだ、さっきから。

と嫌な気持ちになりかけて、こんなところで雰囲気を壊すような妻にもなりたくないし、どんな態度が正解なのかもわからない。

マイクの声がやみ、また、人が動き出したとき⋯⋯ 。

後ろから、女性がいきなり弥勒の髪に触った。

菜摘はぎゅっと気持ちが強張った。

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