シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
「随分と趣味が変わったのね、あら、それともお嬢さん? 」
弥勒が腕組みしたまま、チラッと後ろの女性を確認する。
「あんな美人ばっかり連れてたのに、あら、まぁ⋯⋯ 」
と菜摘を上から下までじろじろ見る。
大人っぽくて背が高くて、巻いた髪がツヤツヤ長くて茶色い。
よく見たらかなり濃いお化粧も、彼女にはちゃんと似合っていて芸能人みたいだ。
足も手も、細いが女性らしく長い。
色っぽくて猫みたい。
声もわざとなのか、ハスキーな美人声。
指がながくて、高価なアクセサリーをさりげなさそうに、そのくせ、ものすごく目立つようにつけてる。
菜摘が諦めた色より、もっとゴージャスな色と艶をまとって⋯⋯ 。
正反対だ。
弥勒の頭をフワフワと触り、弥勒の肩に手を回して、肩の後ろから甘えるみたいに話す。
「妻」
と弥勒が彼女を退けるように腕を掴んだが、どうしたテクニックなのか、彼女はその動きを上手く利用して逆に腕を絡めもっと密着する。
「あら、」
とわざとらしく目を丸く開いて、口を大きく開ける。
「へー、それにしても、こんな⋯⋯ 」
飲み込んだ言葉は『これで手を打つ? 』か。
菜摘はにっこり笑って、
「じゃあ弥勒の本当の好みは、わたしだったみたいですね」
と言った。櫂が横で「うわっ」て顔をしてる。自分の顔だってどんな事になっているのか菜摘は分からない。
一瞬、女性は悔しそうに、弥勒にわからないように菜摘を睨んで、
「じゃね、また」
と後ろから弥勒の頭を持ってこめかみにチュッとして、カッコつけて去っていった。
「⋯⋯ 」
「すげ〜〜〜
オレもこうなるのかな〜〜〜」
「⋯⋯ 」
とカイが興奮して言う。