シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
ちょうど、菜摘が席に戻ってきた時、2人はまだモテの話をしていた。
「でも弥勒のモテたの、目の前で見て、やっぱすげ〜な」
「あー、そうだね」
「何人ぐらいいたんだよ、すでにさっきの3人は見たぜ? 」
「そう両手はいたかな」
「10か、スゲ〜」
「ややこしい女だったな」
「さっきの? 」
「ちょっと寝たぐらいで、婚約者ヅラされ⋯⋯ 」
寝た⋯⋯ ⋯⋯ って⋯⋯ ⋯⋯
2人とも、戻ってきて、そばに立ち尽くす菜摘の視線にはっと気がつく。
弥勒も櫂も、あわてて、中腰になった。
じゃ、私に会う前⋯⋯
さっきの馴れ馴れしい人⋯⋯
途端にリアルな現実として、弥勒の過去が菜摘に突きつけられた。
菜摘は弥勒に会ってから、あの空港からの帰りに多少の誤解があったものの、弥勒の愛を信じて、それこそ必死できたので、そこまで気が回っていなかった。
目の前の弥勒。
それは疑いようがないし、外の弥勒をあまり見たことがないから安心しきっていたのだ。
でも自然に回された彼女の手や、キス、髪に触る手。
いとも容易くそんなことが起こり、焦りもせず、モテちゃってみたいな。
菜摘に異性の過去がないから全く思いつきもしなかった、弥勒があの人と寝たって言った。
じゃぁ弥勒は、さっきのひとも、さっきのもう1人も、さらにもう1人も、そして他にも。
わたしみたいなことを、夜を、愛を共にしたんだ。