春は微かに
「授業で分からないことがあったら友達に聞けばいい。好きな人が出来たなら自分なりに出来ることをすればいい」
「できること、ですか」
「無理しろって言ってんじゃない。自分の限界を自分で決めるなって言ってんだよ俺は」
「……先生、」
「もっと本能的に生きろ、九条」
出来ることをすればいい。限界を決めるな。
本能的に、生きろ。
先生は、私にとって必要不可欠な人だった。正しい答えじゃなくても、彼の答えが全てだった。誰も知らない答えを、私だけに教えてくれた。彼の言葉が、私の人生の道標だった。彼から漂う変わらない香りに安心していた。
───私の寂しさを、埋めて欲しいと願っていた。
「九条。人生ってのはな」
「え?」
「 」
先生が、そう言って笑ったから。
「先生」
「おう、まだ何かあんのか」
「私、先生が好きです」
感情を詰め込んだ瓶の蓋を本能的に開けて、先生がの言うような面白い人生を歩んでみてもいいかなって、
「いっぱい、たくさん、ずっと。……ありがとうございました」
思ったんですよ、先生。