アンチテーゼを振りかざせ
「…では、打ち合わせを始めさせていただきます。本日もよろしくお願いします。」
その日の進行を取り仕切るのは、コンペの時から案件を担当していた、プロジェクトのチームリーダーである、枡川 ちひろと名乗る女性。
艶やかな黒髪を後ろで1つに結んで、パンツスーツがよく似合う彼女は目鼻立ちがハッキリしている。
どことなく、クールで冷たい印象を持ってしまいそうなのに。
「まず初めに。もう何度でも言いたくなりますが、弊社を選んでいただいてありがとうございます。
必ず素敵なオフィスにさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします!」
そう感謝を告げて、屈託なくへら、と表情を崩す様に純粋に驚いてしまった。
長テーブルで、枡川さんのチームの方々と向かい合っている状況で、うちの男性陣がその笑顔に既に絆されてしまっている気がする。
そういうギャップを持ってるのか。
どうりで、コンペで私はちゃんとこの人を見たことも無かった時から、やけに美人だと噂になっていた筈だ。
化粧っ気もそんなに無いのに透き通るような肌で、「こういう恵まれた女、たまにいるな」とやるせない気持ちになる。
こっちは、長時間使っても肌に負担の少ないオーガニック系の、それなりに値段もするファンデを毎日使ってるというのに。