アンチテーゼを振りかざせ
その後、意を決して私は瀬尾さんを呼んだ。
「…資料の件、ありがとうございました。
香月が依頼した訳では無かったらしく、事情を聞いて紙の用意は必要無いと言ってくれました。
…次回以降もデータ共有で進行させていただきます。お手数をおかけました。」
「そうですか、良かった。」
再びお礼を告げた私に、言葉短くそう告げて、ゆるく瞳を解すその人に掴まれるように痛む心臓。
まだ、今日会ったばかりだよ。
さっきあの人に向ける笑顔、見たでしょう?
この人を追いかけるのは
辞めておいた方が良いんじゃない?
頭の片隅では、至極正常なサインが出ている。
「瀬尾さん、連絡先を教えてくれませんか。」
でも。
"ここで引き返したい"
"この人をもっと知りたい"
相反する気持ちの中で、無意識のうちに私はそう告げてしまっていた。