アンチテーゼを振りかざせ




チラリ、カウンターを一瞥すると、
笑顔を保って"カルピスサワー"を手にする女。

そこに違和感を抱きつつ、
視線を留めてしまう理由は、自分でも分からない。




そうして暫くして、休憩から戻ってきた時。


「生ビール1つください。」

「…はい。」

気怠い男に呼ばれて、注文を取りに行ったら何故だか急に、食事もだいぶ進んだこのタイミングでオーダーされたそれ。


伝票に書き入れつつ、やはり視線は女の方へと自然に向かって。

カルピスサワーの入ったグラスを持って少し俯いて唇にキュ、と力を入れた女の大きな瞳には、

______厚い膜が張っていた。
 


絶対流さない、そういう意思で誤魔化すようにパチパチと瞬きを繰り返す女の異変に、隣に座る男の方はあえて気づかないようにしているのか、少し困ったように俺に笑っただけだった。



手を伸ばしてその目尻に触れて、涙を拭い取りたくなった理由はやっぱり、自分でもよく分からない。

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