アンチテーゼを振りかざせ
"何か思うところあったのかなって、勝手にそう見立てしてたんだけど。"
香月さんの言葉は、その通りだ。
私は、このプロジェクトに、気持ちの高鳴りを感じている。
だから完成後に携われる運営委員会にも、参加をしてみたいと思った。
通常業務も、沢山あるのにな。
こんな気持ちになるのは予想外だった。
「…香月さんは、ゆるい方なのか鋭い方なのかどちらですか?」
そう素朴な質問として尋ねても、彼は楽しそうに声を出して笑うだけで避けられてしまった。
____そして、私には予想外がもう1つある。
アポイントの時間ぴったりにやって来た枡川さんに、オフィス運営委員会の概要を伝えた時。
上層部からの声もあって、瀬尾さんをアドバイザーとして迎えたらどうだ、とのお達しがあり、そのことも正直にそのまま伝えれば、
「瀬尾に、伝えておきますね。」
と彼女は笑って了承してくれた。
打ち合わせ後、半ば無理矢理にエレベーターに一緒に乗り込んで見送るという行動に出た私は、遂に尋ねてしまう。
「プライベートなことで仕事全然関係無いんですけど。
…瀬尾さんって彼女いますか?」
「え、」
嗚呼、やっぱり。
彼の名前を出した瞬間、分かりやすく整った顔が揺れた。
プロジェクト中は、枡川さんが瀬尾さんに何か"そういう"態度を示すことは無い。
だけど、女の勘って絶対当たってしまう。
「…い、いないと思います…」
不安気な声を聞いて、それで彼女の瀬尾さんへの気持ちを確かめようとするなんて、私は性格が悪いなあと苦く笑みを溢した。
「急に、変なことお聞きしてすみませんでした。」
「あ、いえ、大丈夫ですよ。」
「…あの、もうお気づきだと思うんですが。
__私、瀬尾さんが好きなんです。」
気になったきっかけは、些細で取るに足りない。
会った回数も、まだまだ数えられる程度。
メッセージだって、いつも数回の往復。
それでも、あの気怠い人が、気になってしまうの。
きっと、もうとっくに好き。