アンチテーゼを振りかざせ
その後、チーム合同で最近オープンしたばかりの商業施設の屋上にあるビアガーデンへ行った時も。
ただ何とか必死に瀬尾さんの隣をキープすることしか出来ない私は、滑稽だ。
お手洗いに行って軽く化粧を直して席へ戻ろうとした私は、鞄を抱えて帰り支度を済ませた様子の枡川さんに名前を呼ばれた。
まだ飲み会は始まったばかりだと言うのにどうしたのかと不思議に見つめると、彼女は1つ深呼吸をして話を始める。
「……保城さん。私、あの男と同期で居られるのは、もちろん誇りです。」
「……、」
「どんなに忙しくても、いつもの調子で隠して、だけど本当は限界まで頑張って良いものをつくろうとする。
その姿勢を見てきて、学ぶことも沢山あります。」
パリッとしたパンツスーツで姿勢の良い彼女の、真っ直ぐな言葉。
「だけど私、余裕なんかこれっぽっちも無いです。」
「…え?」
「……"同期の枠"からなんとか抜け出さないとって毎日思って、焦ってます。
____瀬尾が、好き、ですから。」
妬みや僻みたっぷりだった私の宣言とは、あまりに違う。
格好悪い自分を嫌と言うほどに自覚し、俯きそうになった瞬間、
「あと、とても嬉しかったです。」
再び、目の前の枡川さんが澄み通る声で言葉を紡ぐ。
「先日、"商談が丁寧だ"と言って下さって。
プロジェクトはこれから佳境です。
私も、引き続き全力で取り組ませていただきます。
どうぞよろしくお願いします。」
急にそう言った枡川さんは深々とお辞儀をして。
部外者は引っ込んでて、とでも言われるのかと思った。
いや。
「(この人が、そんなこと言う筈無いか。)」
恋愛の話をしていた筈なのに、結局何故だか仕事の話に戻ってしまうこの彼女に笑った。