アンチテーゼを振りかざせ





何故だか、無言で視線を交わす沈黙の時間。

その間に、私は先程この男に言われた言葉を反芻してみる。


"_____清楚つくりこむの、やめたの?"


"つくりこむ"って、その表現。

全然まったくもって褒められて無いことだけはすぐに分かった。

どうして初対面の人間にそんな風に言われないといけないの。




冷静に自分の頭でそう思えば思うほど、顔が顰めっ面になる。その苛立ちの中でも一応お礼を言って、ビールジョッキをもはや奪い取った。




「あ。機嫌損ねた?」


そんな私の態度を尚もクスリと笑って見届けた男は

「あんた、面倒だね。」

まずはそんな感想を漏らす。




は?と、小さく返しつつ視線を絡ませると、



「_____息が、し辛そう。」

「、」


そこだけは低く、やけに鋭い声と光る瞳で告げた男は、その後はまたあっさりと笑顔に戻る。




なんなの。


いよいよ文句を言ってやりたくなって、口を開こうとした瞬間、


「あれ、今日シフト入ってたの?」


お手洗いから戻った枡川さんが、顔の赤いままにそう男に声をかけた。


「今日遅番だったんすよ。」

「なるほど。」

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