アンチテーゼを振りかざせ
「…いつもご来店ありがとうございます。」
「あ、こちらこそありがとうございます。」
「まじで来過ぎっすけどね。」
「だいぶ売り上げに貢献してる自信あるよ。」
笑って交わされる目の前の2人の会話は、とても和やか。
そして空いている皿を慣れた手つきで回収した男は、再び形の整った三白眼で私を見やった。
「…サキイカも、持ってくる?」
「……は?」
揶揄うような、何か探るような、やけに愉快な瞳でそう尋ねられて、私はジョッキを持ったままそう怪訝に聞き返す。
「ん?2人は面識がある…?」
「無いです。」
だってこんな派手な髪色の男は、知らない。
当然、今までの彼氏の中にだって居ない。
不信感を募らせて即答すると、男は口角を上げて特に何も言わないままで。
「あんまり飲み過ぎないようにしてください。」
「店員さんにそれ言われるの、やばいね。」
「やばいです。」
クスクスと笑いながら枡川さんへの忠告を終えた男は、その人懐っこい笑みのまま私を見て、
「じゃあ、また。」
そんな言葉を終えて、片手で器用におぼんを扱いながら去っていった。