アンチテーゼを振りかざせ



「…いつもご来店ありがとうございます。」

「あ、こちらこそありがとうございます。」

「まじで来過ぎっすけどね。」

「だいぶ売り上げに貢献してる自信あるよ。」


笑って交わされる目の前の2人の会話は、とても和やか。

そして空いている皿を慣れた手つきで回収した男は、再び形の整った三白眼で私を見やった。



「…サキイカも、持ってくる?」

「……は?」


揶揄うような、何か探るような、やけに愉快な瞳でそう尋ねられて、私はジョッキを持ったままそう怪訝に聞き返す。



「ん?2人は面識がある…?」

「無いです。」



だってこんな派手な髪色の男は、知らない。

当然、今までの彼氏の中にだって居ない。


不信感を募らせて即答すると、男は口角を上げて特に何も言わないままで。


「あんまり飲み過ぎないようにしてください。」

「店員さんにそれ言われるの、やばいね。」

「やばいです。」



クスクスと笑いながら枡川さんへの忠告を終えた男は、その人懐っこい笑みのまま私を見て、

「じゃあ、また。」

そんな言葉を終えて、片手で器用におぼんを扱いながら去っていった。












< 26 / 203 >

この作品をシェア

pagetop