アンチテーゼを振りかざせ
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重過ぎる足を前に進めようとする度、心が沈んでいく。
とっくに日は落ちて、夜に覆われた暗い道を歩きながらも、どうしたって今日の出来事がフラッシュバックする。
相当苛立っていた営業部の男性は、ほむさんに「年寄りで忘れっぽくてすいません。」と言われながら早々に対応することを約束され、渋々、その場を去って行った。
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「…ほむさん、どうして。」
「何が。保城ちゃん、顔が珍しく怖いよ。」
「……あれ、嘘ですよね。
課長からそんな指示、されてなかったでしょう…?」
結果として急に対応を迫られた依頼により残業をする中で、私は震える声でほむさんにそう問いかける。
彼がそんなミスをする筈が無い。
青ざめていた課長は、一連の流れでも黙ったままだった。
定時間際に、「大丈夫?」と気休め程度に聞かれたが、委員会のことも業務内容も何も理解していない彼に残業をされても無駄だと「大丈夫です。」と笑顔をつくって、フロアから追い出して。
総務部でまだ残っているのは私と、ほむさんしか居ない。
彼は、カタカタと難なくパソコンを扱う手を止めて、口元に笑みを浮かべる。
「保城ちゃん。まだ、諦めないで。」
「……え?」
「…保城ちゃんは、将来を担う若者なんだから。
こんな老ぼれでも盾になれるなら、結構。」
「…何言ってるんですか……、」
「"楽しい"を、もっと大事にしてよ。」
"_____保城は、楽しい?"
"今の仕事。"
この間、あの居酒屋で香月さんにもそう聞かれた。
「楽しい」だけで、仕事をできることなんて無い。
そして、そうするべきじゃないと。
今日、痛いほどに思い知った。
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