アンチテーゼを振りかざせ





アスファルトにパイソン柄のヒールを鳴らせて暫くすると、いつものコンビニが目に入る。

今日もなんの変哲もなくただ光りを放つその建物の明かりと、心に落ちる影の暗さがあまりにアンマッチしていた。


何も食べる気にならないし、今日は流石に干物女で買い出しに出かける気力が湧く筈もない。


素通りして自分のマンションへと歩みを進めようとすると、



「____あ。良かった、会えた。」


制服の上に今日は、黒のコーチジャケットを羽織った男は何故かコンビニから少し離れた道の脇にしゃがみ込んでいた。


そう呟いた男は徐に立ち上がって、私へと近づく。


当然のように白に近いアッシュが目に入った瞬間、再び涙腺が緩み出すのは、どうしてか分からない。



「…何してんの。」

「クーポン渡そうと思って。
今回は、"小ビール&おつまみ小鉢セット無料券"。

めっちゃお得だし、絶対好きでしょこんなん。」


愉快に笑って、私にそれを差し出してくるけど、辺りは暗いし、なんか視界も歪んでるし、うまくそれの正体を確認出来ない。



「今日ちょっと早番だから、あんたの干物化の時間は間に合わないと思って、休憩中に待ってた。

こんな時間まで仕事して、社会人は大変だね。」


「……、」



他人事のような感想を述べる男を前に、言葉が詰まる。

ひくつく喉のせいで、何も言えそうに無い。



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