アンチテーゼを振りかざせ
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「……下山課長に啖呵切ったんだって?」
「…切ってないです。デマは、やめてください。」
またしてもウォーターサーバーの調子が悪いとの報告を受け、給湯室で「もう買い替えてよ!!」と心で叫びながら業者への報告内容を考えていると、後ろから聞き覚えのある声が届く。
「そうなの?羽村さんが嬉しそうに言ってたけど。」
「なんでそんなほむさんと仲良しなんですか…」
溜息を吐いて問う私を特に気にせず、香月さんは「俺、羽村さんファンだから。」と、にこやかに笑っていた。
「香月さん。私、あのリーフレットを作ったことは、後悔してないです。」
「…うん。」
「…でもあの時、何も言い返せなくて、ほむさんに庇ってもらった自分が情けなかった。
仕事はただ、とにかく捌くことを優先してきてたから、私、自分の気持ちを上手く認められてなかったんだと思います。
…ほむさんにもう、聞いてるかもしれないですけど、
私はリニューアルの仕事が楽しくて、だから運営委員会も、引き受けました。」
____"上に言われたから。
それだけで引き受けたの?"
なんだか最初から、ほむさんにも香月さんにも、全て見通されていた気がする。
私の周りは、あの課長とは全く別の意味で厄介な上司達が多いらしい。
私の言葉に穏やかに笑った彼は、
「リーフレットの第2弾も、楽しみにしてる。」
そう労いをくれた。
「勇気出せたのは、なんか心境の変化でもあった?」
そしてそのまま尋ねられる。
心境の、変化。
どうだろう。
私の本質は、そんなにきっと直ぐには変わらない。
____"明日も1日頑張れ代、だけど。"
でも。
「……缶ビールとサキイカ、貰ったので。」
そんな小さなことで力が湧いたりできる、
単純さも持ち合わせてたりする。
そう言って笑うと、香月さんは不思議そうな顔をしていた。