アンチテーゼを振りかざせ
◻︎
かぽかぽと、アスファルトにリズムよく間抜けな音を響かせるのは、黒色の可愛げの無いサンダル。
大きなメガネに明らかに手を抜いた格好でマンションを出たのが、あの男に提示された時間を5分過ぎた頃だったのは全く、偶然の話だ。
歩みを進めて夜の闇に慣れた頃に突如現れる、眩い光。
近づいて店内を外から見たところ、髪色の明るい店員は居ない。
もう、休憩に出たのだろうか。
たまに話をする時は、コンビニの隣に並ぶ古びたビルとの薄暗い隙間だった。
体の向きを変えて、足をその方向へどうしてだか踏み出そうとした時。
「_____梓雪。」
聞き覚えのある、女性の声がすぐ側から届いた。
急な音にドキ、と心臓を騒がせながら、そっと、そっと、サンダルが間抜けな足音を立てたりしないよう、近づく。
_____そして。
「っ、」
目にした光景に、
喉がひゅ、と泣くような音を立てた。
その数秒後には、頭より身体が先を急ぐように
勢いよく振り返って、来た道へと走り出した。