アンチテーゼを振りかざせ





"とりあえずまた、連絡する。"


そう言って切れたスマホを握ったまま、その場に暫く立ち止まっていたけど。


私はずっと、何を悩んでるの。

何も困ることなんて無いでしょう?


頭でそう理解しようとすればするほどに、上手くコントロール出来ない感情がそれを邪魔する。


そうして自分のすぐ隣に位置するガードレールが視界に入った瞬間、ここにもたれかかっていた"誰か"を、簡単に思い出しそうになっていた。




振り切るように、足を再び踏み出そうとした時。



「______紬。」

「っ、」


まるで私の抵抗を知っているかのようなタイミングだった。

背後から聞こえた声に、心臓が大きく跳ね上がる。



ゆっくり振り返ると、ゆらりガードレールにもたれる人影。

車道を車が通っていく瞬間に、ヘッドライトはそれを容赦なく照らす。



夜の闇に溶けない、白に近いアッシュの髪。

黒のアノラックパーカーのポケットに両手を突っ込んで、スポーティなスニーカーを履いた片足を、器用にガードレールに引っ掛けている。



こちらを見つめる三白眼が、光を取り込んで向ける視線は、何故か今までで1番、鋭く見えた。












< 99 / 203 >

この作品をシェア

pagetop