―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「いたっ」

振り向く前にボールまで飛んできた。
泉コーチがくすっと笑い「早く戻ったほうがいいよ」と後ろを指さす。

振り返ると龍道コーチと生徒たちが揃って透子を見ていた、というより睨んでいた。
軽く殺気さえ漂う風景は、まるで透子のお気に入りのバイオレンス映画『ウォリアーズ』のワンシーンのようだった。

『べ、べつに泉コーチにちょっかい出していたわけじゃないですから』
心の内で弁解しながら透子は慌てて元の位置に駈け戻った。

そのとき、もう落ちないようにとしっかり振動止めを付けなおしたはずなのに、レッスンを終えたときにはまたもやなくなっていた。

みんなが去った後、透子は急いでコートの中央に戻り、床を見渡した。
小さいけれど黄色の目立つ色なので、落ちていればすぐにわかると思ったのだが見つからない。
あきらめて帰ろうとすると、閉めた出入り口のドアの前に龍道コーチが立っていた。

「もしかしてこれ?」
黄色い振動止めを長い指で挟んで見せる。

「あ、そうです」
差し出された振動止めを受け取ろうとするが、龍道コーチは指を離さない。
もっと少し強く引っ張ってみたが同じだった。

「あの、何やってるんですか?」
「返してほしい?」
透子の目の前で龍道コーチが振動止めをひらひらかざす。

ほしい?って、それ私のだし、探していたんだし、返してくれるのが当たり前よね、と不審に思いながらも素直に「ほしいです」と返事をした。

「じゃ、ラインを交換しよう」
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