自信のない恋に優しい愛
辞表を提出してから約一カ月後の実質最終日となったその日、就業後に夕礼が行われた。
送別会はみんなの都合で先週に開いてもらっている。
夕礼には隣の総務課の人たちもわざわざ仕事の手を止め、帰宅を遅らせてまでみんなが参加してくれ、この9年間頑張った事が無駄ではなかったのかと思えて慰められた。
もちろん、まだ再就職先は決まってないけれど頑張れるだけの気力と自信を貰えた気がする。
そして挨拶も終わり解散となったその時に、圭介が大きな花束を抱えて庶務課に入ってきた。
「崎山さん! 戻られてたんですか!?」
総務課の女の子の嬉しそうな問いかけに「さっきね」と答えている彼を、私はただただ驚いて見ていた。
今日帰国するなんて聞いていない。
「さすが長く居座っただけありますね? 営業部からも花束が貰えるなんて!」
「違うよ」
理奈の嫌味が混じった言葉を圭介はすぐに否定すると、私に向かって微笑んだ。
「これは俺個人から穂乃香へ。送別の為じゃない、結婚の申し込みに添える花束だから」
「圭介……」
そこから俄かに周囲が騒がしくなったようだけれど、私の頭の中には色々な音がガンガンと鳴り響いていてよく聞こえない。
その中で、圭介の真剣な声だけが真っ直ぐに届く。