エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
ファーストキスだった。
キスなんて、自分とは縁もゆかりも無いものだと思っていたのに。
なんということでしょう。
社長にキスをされてしまいました。
今、私の目の前で仕事用のタブレットを操作する彼が、私の唇をいとも簡単に奪いました。
はぁ。なんてことをしてくれたのよ、社長。
「よし、行くぞ」
「え? どこへですか」
「偵察」
私がキスのことを考えている間に、社長は仕事を思いついたらしい。
偵察なんて、今日の予定にないもの。
そう、社長は信じられないくらい通常運転。
キスなんて無かったみたい。なんならデートだって。
私は楽しかったんだけどなぁ。 社長も楽しかったって言ったよね?
社交辞令だったのだろうか。
そこでハッとする。
なに私、面倒くさい女になってるの!?
ダメダメ。考えてたって仕方ない!
私たちは社長と秘書!
デートに一回行ったくらいでその関係は脅かされない!
*
「偵察って、ここ……」
「一応、ちゃんと仕事だ。 少し早いが、昼飯いけるか?」
「はい。 大丈夫です」
社長と来たのは風情のある旅館だ。
確かここは、ライバル社の……
「近年業績がうなぎ登りの強敵。 飯が上手いらしい」
「へぇ……綺麗な建物ですね」
「まぁな。 うちは旅館の展開が少ないから、今後の参考にでもさせてもらおうか」
なるほど。それでここへ来たのね。
確かに大事な仕事だ。