エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
*
「あの……秋月…さん!」
水曜日の午後のこと。お昼休憩の最中、私は見知らぬ女子に声をかけられた。
なぜ、私の名前を知っているのかって……社長のファンか何かなら、秘書としてずっと近くにいる私のことなど調査済みといったところだろう。
「はい、なんでしょう」
多分相手は年下。 ゆるふわ系のこの子は、新入社員の中でも一際目立っていたもの。私も見かけたことがある。
「社長と秘書さんて、付き合ってるんですか!?」
聞いた瞬間、飲み込む寸前のお茶を吹き出すところだった。 アブナイ。
「ど、どうしてそんな話が…?」
「最近、社長と秘書さん二人の外出が多いです」
ひいぃ。よく見てらっしゃる。
確かに最近…というかあのデートの日以来、社長は私を同行させることが増えた。
それは私たちの距離というものがどことなく近づいてしまっているのもあるだろうけれど、単に秘書として役に立つことが増えたっていうのもある。
今年で二年目ですからね、私も。
「一応、秘書ですので」
「でも、この間の土曜日。 社長と秘書さんが仲睦まじく歩いているところを見たって子がいるんです!」
今度は はぁ!?っと変な声が出るところだった。
まさかそんな、そんなとこまで見られてたの!?
恐るべき、社長のファン!!
「み、見間違いじゃないかな〜。 私たち別に、付き合ってないよ。 誤解です」
一緒に出かけたなんてバレたら、何されるかわからないもの!
嘘も方便って言うでしょ。
「なんだぁ、良かった。 食事中に失礼しましたあ〜」
なんちゅう切り替えの速さ。
年、ひとつしか違わないはずなのに、なんだかよく分からない若さを突きつけられた気分だわ。
はぁ。やっぱ社長っておモテになるのよね。
確実に目をつけられる前に、今一度距離感を改めた方がいいかも。
ああ…怖い、怖い。