エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「相良、今日はありがとう。 とても美味しかったよ」
「本当? 良かった。 でも、こんなので許されることじゃないよ。 何かあったらいつでも言って。 私にできることならなんでもするから 」
「……本当になんでもしてくれるの?」
「うん。 だってそれだけのことをしたんだもの」
本当にこんなのじゃ足りないくらい。
あんなこと言われて気を悪くしないはずないもの。
岩倉くんだから大事にならなかっただけで、下手したら訴えられてもおかしくないはず。
「そう…だよな」
岩倉くんの声のトーンが急に下がった。
今になって怒れてきたのかもしれない。
社長に言われたこと。
「相良はさ、隙だらけだよな」
「えぇ…? そんなこと――」
「あるんだよ。 社長サンがあんな風に心配するのも無理ないと、俺は思うけど」
岩倉くんが私に、一歩近づく。
私は反射的に一歩退いた。
彼の雰囲気がピリッとしたものに変わったのを、本能的に察知していたのかもしれない。
「相良。 なんでも、してくれるんだよな?」
息が詰まりそうになる。
なんで…? 頷けない。
念を押すように言われて、肯定するのを体が拒否している。
「いわ…くら……くん…?」
じりじりと迫ってくる彼から逃げるように後ずさり、あっという間に私の行き場は無くなった。
彼との距離もない。
岩倉くんは目の色を変えて、私の両腕を掴みあげた。
「い、たい……岩倉く、離して!」
「相良、俺がキスしても何も言えないよ? 何でもするって言ったの、君だからね」
「嫌、やめて…ねぇ、岩倉くん! どうしてこんなことするの――」
力いっぱい抵抗しているのに彼はびくともしない。
「そんな弱い力で俺から逃げられるわけないでしょ。 諦めて大人しくしてくれないかな」
岩倉くんの口調だけがそのままで、表情はもう別人だった。
こんな人、知らない。 本当に知らない人といるようだった。
「嫌よ! やめて、離して! 変なこと考えないで、目を覚まして!」
「目を覚ます? 笑わせるな。 俺は今興奮しているよ。 君のその怯えた顔、堪らないね」