エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~




走って走って目指したのは会社だ。
社長に謝らなきゃ。
私が間違っていた。
社長の言う通りだった。

そう言わなきゃいけない。
岩倉くんは追ってこない。
会社にはまだ人がいる。
入ってしまえば取り敢えずは大丈夫だと思う。





「社長!!!」

私は荒々しく社長室のドアを開けて叫んだ。
汗でメイクもぐしゃぐしゃだ。
こんな姿で街中を走っていたのを恥ずかしがるのは後にしよう。

「……陽葵!? どうした――」

「ごめんなさい! ごめんなさい、私が悪かった。 社長の言う通りだった…! 信じられなくてごめ――」

社長はボロボロの私を勢いよく抱き寄せた。
私の言葉を遮って、またあの冷たい声で言う。

「あの男か」

こくんと頷くと、社長の腕の力が緩められる。

「怪我は?」

「してません」

「すまない。 まさか本当に会っているとは思わなかった」

「ど…して、社長が謝るんですか。 悪いのは私です! 酷いことたくさん言って、それ、で」

悪いのは私。
分かっているのに、そんな資格ないのに涙が出てきた。
最低なことをしたのに、社長に抱きしめられて心の底からほっとしている。

「俺の言い方が悪かった。 もっと違う方法で伝えていれば、陽葵がこんな思いをすることはなかったはずだ。 すまない、ごめんな」

彼の腕の中で、私はしきりに首を振った。
社長のせいじゃないのだ。 本当に。
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