エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~

私たちは駅前の警察署に向かった。
けれどそこに私のバッグは届いておらず、特徴と中身について話して、見つかったら連絡をもらうことになった。

このままだと私は帰れないので、岩倉くんと会ったお店にも行ってみたけれど、外に落ちてるわけもなく、お店にも届いていない。

「どうしよう」

もしかしたら岩倉くんが持っているかもしれない。
けれど、正直今は会いたくない。
それは社長も分かっていて、口には出さないでいてくれる。
というか、そもそも連絡手段が無いのだけど。


「なあ、俺、いい宿を知ってるんだけど。 そこならタダで泊めてくれるかもしれない」

「えっ!? 本当ですか? それ、本当にほんと!?」


後で思えば、これほど胡散臭い話などないと思う。
でも、帰る方法も無ければ今夜寝る場所もなかったこの時の私にはそんなことを考えている余裕などなく。

「本当に本当。 案内するよ、タクシーを呼ぼう」

ちゃっちゃか話を進める社長の口車にまんまと乗せられたのだった。


私が初めて疑ったのは、そう。
そびえ立つ高層マンションを目の前にした瞬間だった。





「は、春希さん!? 本当に大丈夫なんですか? ここ、なんだかとっても高そうな……」

「心配するな」

社長はそれしか言わない。
絶対おかしいって。
ここに来て社長が詐欺師とかそんなオチ?
いや、あるわけないけどそんなこと!
でもこのマンションは、そんな憶測が過ぎっても不思議じゃないくらいにご立派なのだ。
エントランスにはコンシェルジュ、超静かなエレベーターで最上階へ。
内廊下を進んで案内された部屋ときたら、ここは高級ホテルのスイートルームか何か!?


「な、なんですかこの部屋!?」

もう頭の中は大混乱。
卒倒しそうな私に、社長は追い打ちをかけるように言う。

「俺の部屋」

って。

「は!?」

「大丈夫だ。 金は取らないから」

「いや、いや、そうじゃなくて!」

何考えてるの!?
てっきり、ぼろぼろの民宿かどこかに連れていかれると思ってた私が馬鹿なの!?
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