エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~

「キス。 してくれる?」

「は……いや、あの……」

しどろもどろになっていると、社長がふっと笑う声が聞こえる。

「冗談だよ。 そんなに慌てなくてもいい」

なんだ…冗談……

「春希さん!」

思わず、立ち上がって私から離れていこうとする彼を呼び止めた。
社長が半端な姿勢で動きを止め、私を見た。

「その……ほ、ほっぺで良ければ…いたします、よ」

自分で言っておいて爆発しそうなくらい恥ずかしくなる。
社長はぽかんとしているし、あぁもう!
なに、私は社長にキスしたいの?
最早自分の気持ちすら理解できない。
カチンコチンになっていると、社長の表情が少しずつ意地悪なものに変わっていく。

「本当、陽葵は最強だよ」

くくくっと笑いながらよく分からないことを言う。
やっぱり私、乱暴な女だと思われてる……?
と思ったけど、どうやら違うようだった。

「陽葵のキス、頂きたいな」

私の方に回ってきた社長がグイッと顔を寄せてくる。
ほら、ここ。 というようにほっぺを指さされ、私は覚悟を決めた。 っていうか、自分で言い出しちゃったことなんだけどね!

「失礼、します」

一応断ってから、私も顔を近づける。

触れるだけの軽すぎるキスなのに、社長はご満悦とばかりに微笑む。

恋人でもない人にキスをしてしまった。
ルール違反な気がするのに、社長の表情を見ていたらそんなことどうでもよくなってくる。
困ったなぁ。 私、いつからこんなに肉食系女子みたいになっちゃったんだろう。

「ご馳走様」


そんなに嬉しいですか? 私のキスが!!
大して上手くもないというか、なんならちょっと頬に当たっちゃった。てへ。 みたいなものなのに!
社長にとって私って、なんなんだろう!?
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