エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
案の定、秋月はかなり狼狽していた。
その様子までも〝可愛い〟と思ってしまった時は自分でも驚いた。
カッコイイとはよく言われてきたが、女性に対して逆に感情を持つことなんてなかったからだ。
俺は初めて、この人にならどんなことをされてもいいと危ないことを思った。
*
そんなこんなで徐々に距離を詰めてきた。
しかし、さすがにプロポーズするつもりはなかったのだ。
そもそも恋人同士でもないのに。
それは陽葵も同じことを思っただろう。
でもあの時、陽葵とこの先も一緒にいたいと思ったのは本当で、俺が言ったことは全て本心だ。
けれどいくらなんでも順序を間違えた。
まずは恋人同士という段階を踏んでだな……。
いや、今更後悔しても遅い。
――あの時、一瞬見せた陽葵の思い詰めるような表情。
『私を……一生離さない自信がありますか?』
何が彼女にそんなことを言わせたのだろうか。
その言葉は、順序を間違えた俺に幻滅しているでも……俺との未来は考えられないわけでもなく、ただただ陽葵は未来を不安視していた。
そう感じたのは俺の気の所為かもしれないが。
実際、俺は陽葵を離すつもりはない。
というか、離してやれる自信が無い。
俺と陽葵との関係についての噂の中にひとつだけ本当なのがある。
俺は秋月陽葵にぞっこんだ。
女性が『少し、考えさせてください』という時。
その心は?
俺は、振られたのだろうか。