エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「――長……社長!!」
はっと我に返り、目の前の顔にびくりと肩を揺らす。
陽葵が心配そうにこちらを見ている。
「社長、お疲れですか? 早退しますか? スケジュールの調整はできますよ」
「いや、大丈夫だよ。 ありがとう」
陽葵は仕事中、変わらない態度で接してくれる。
もし、彼女が俺に対して幻滅していたとしたら。本当は俺の顔など見たくないと思っているのではないか。
そんなふうに思う一方で、仕事は仕事と割り切ることのできる陽葵を更に好きになる。
ああ、我ながら気持ち悪い。
自覚しているだけマシだと思いたい。
「午後の予定ですが――」
そうだ。仕事をしよう。
俺はもともと仕事人間。 とりあえず仕事に集中して忘れよう。
どんなに俺のことが嫌いでも、待ってと言ったからには返事をくれるだろう。
気がつくと、時計は午後九時半を回っていた。
やっぱり仕事をしていると気が紛れる。
陽葵は……もう帰ってるか。
大きく伸びをして体をほぐすと、ふと紺色の缶が目に入る。
…ラブレター入れだ。
陽葵の思いつきによって作られたそれは、きちんと役割を果たしている。
そういえば、貰った手紙は読めと陽葵が怒っていたな。
俺は読まずに缶にぶち込んできたが、もしかして陽葵はそういう雑で適当なところも嫌いなんじゃ――
せめて、これ以上嫌われてたまるか。
俺は勢いよく立ち上がり、お菓子の缶の蓋を開ける。
未開封の手紙が三通。
封を開けて、ひとつずつ読み始めた。