エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~


「母さん!? と、陽葵! え、なんで二人が一緒に……」

ああ、本当に社長のお母様だったのね。
そしてそれは私も聞きたいです。

いつの間にかエレベーターは最上階に戻ってきていて、そこに居たのは忘れ物に気がついて取りに戻っていた社長。

「あ、社長、探しているのってこれですよね。 今、届けに向かおうとしていたところで…」

「それで、途中で母さんに捕まったのか」

「はい、まぁ、そういうことです」

なんとなく歯切れが悪くなる。
だってだって、何このスリーショット!?
私、彼氏のお母様とご対面て、もっときちんとした場所でって想像していたのに!
急展開過ぎて頭が追いつかないよ……。
そんな私を見兼ねてか、社長はクイッと私を引き寄せて耳打ちする。

「母さんに何かされなかった? あの人海外に住んでて、感覚おかしいとこあるから。 気をつけて」

なるほど。
いきなりどこまでいってるの? なんて聞いてきたのにはそんな理由が。
ほっ。ちょっと安心。
きっと海外と日本では、そこら辺のアレが全然違うんだわ。

はっ! 平常心を取り戻して気づいたけど、お母様にろくなご挨拶もなしに!

「先程は失礼致しました。 改めまして、秋月陽葵と申します」

「いやだわ。 そんなにかしこまらないでちょうだいよ。 春希のカノジョなんでしょ? 近い将来家族になるかもしれないのだし、お互い肩の力抜いていきましょ」

そ、それってつまり、結婚という!?
恥ずかしいけど、でも、嬉しい。
お母様は当然のように私を家族になる人として扱ってくれる。
鴻上家とは似ても似つかない一般家庭の私なのに。

「あ、陽葵、悪い。 俺もう行く」

「は、はい、そうですよね。 お気をつけて!」

っってことは、当然、お母様と二人きり……!!
えっ、どうしよ。
当初の予定では、社長が帰ってきたら食べるケーキを買いに行くところだけど……さすがにそれにお付き合いいただくわけにはいかないよね…。

「ねぇ、陽葵さん」

あれこれ考えていると、お母様が頬に手を当てて尋ねてくる。

「この辺に、美味しいケーキ屋さんはないかしら」

お、おお!

「甘いものがお好きなんですか?」

「ええ、そうなのよ! 春希も甘党じゃない? それって多分、遺伝ね」

やっぱり! そういうことなら、今日のケーキは行ったことのないお店じゃなくて、私イチオシのお店にしよう!

「近くにとっても美味しいお店がありますよ! ご案内します、一緒に行きましょう! 」

「本当? 嬉しいわぁ、お願いしますね!」

お母様が手を合わせて嬉しそうに微笑む。
ふふふ。 これはなんだか楽しくなる予感だ。
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