秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「茜音ちゃん。少し散歩に行かない? 斗碧。晴馬くんを頼む」

兄は驚いて目を見開く。まさか涼晴が私を誘い出すとは思わなかったのだろう。

「え、や、なんで散歩?」

「気分転換したほうがいいだろう?」

「いや、だとしても、そういうのは兄の役目だろ」

「医者の意見のほうが説得力があるかと思ってさ」

医師であることを引き合いに出され、兄は渋々納得する。けれど、今度は私が首を横に振った。

「私、行かない。晴馬のそばにいる」

こんな状況で晴馬を置いて散歩になんていけない。今も晴馬はアレルゲンの上で眠っているんだ、いつ発作を起こすかわからない。

頑なに拒むと、涼晴は少しだけ眼差しを厳しくした。

「そんな顔をしていたら、晴馬くんは不安になるよ」

冷静になれと叱られているのだと気づき、私は恥ずかしくなってきゅっと唇をかみしめる。

私たちの間に流れる空気を読んで、逆に兄のほうがそわそわしだし、心配そうな顔でこちらを覗き込んだ。

「茜音。少し、頭をスッキリさせたほうがいい。これから長期戦になるんだろう? そんなに思い詰めていたら身がもたない」
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