秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
でも、彼は純粋に私を心配してくれているようだ。気遣わしげな笑顔を見て、申し訳ない気分になる。

私たちはマンションを出て大通りをふらふらと歩いた。もう五月の頭、夜出歩いていても寒いとは感じない。

桜並木は葉が茂り、夏に向けて準備を始めている。

「茜音。シングルマザーはつらい?」

不意に涼晴が尋ねてきた。たぶん、今の私がつらそうに見えたのだろう。涼晴の目からは不幸な女に映っているのかもしれない。

「……お兄ちゃんがいるから、恵まれているほうだと思う」

正直につらいとは言えなかった。なんだか晴馬に悪い気がして。

ぼんやりと頭上の木々を仰ぎながら、私は少しだけ自分の気持ちを漏らした。

「晴馬の風邪で、先週一週間会社を休んだの。今週は出社するって約束していたのに、結局は休んでばかり。もしも私が孤独なシングルマザーだったら、クビになったらどうしようってノイローゼになっていたと思うの」

クビになれば収入はゼロ。再就職も難しい。そんな中で子どもを育てていかなければならないというプレッシャーは、心をぼろぼろに蝕むだろう。
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