秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「どうして、晴馬くんを産んだ? 父親のいない子なんて、堕ろそうとは思わなかったの? つらく苦しい目に遭うってわかっていただろうに」

「医者である涼晴がそんなことを聞くの?」

もちろん、本心ではないだろう。命を救う医師である彼が子どもを堕ろせばいいなんて思うわけがない。

きっと私を揺さぶることで本音を引き出したがっているのだ。あるいは、確かめたいのかもしれない。生半可な覚悟で産んだわけではないと。

「もちろん、不安だったし、兄にも泣いて反対されたの。でも――」

不思議と、堕ろしたいと思うことは一度もなかった。

そこまで子どもが好きだったわけでもない。以前の私なら、迷わず堕ろしていたと思う。

けれど、あのときはなぜか運命のようなものを感じて。

奇跡的に授かったこの命を、大切に育まなければ、そう思った。

「お腹に赤ちゃんがいるって気づいた瞬間から、お母さんになってしまったの」

男の人にこの感覚が理解できるのかはわからないけれど、私の中で確かな母性が目覚め『赤ちゃんをその手に抱け』と命令してきた。

「それにね――」
< 130 / 205 >

この作品をシェア

pagetop