秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
そんな考えを抱きながら、一日一日と時は過ぎ、涼晴に問い詰めることもできぬまま、気がつけば彼の渡米まであと一週間を切っていた。

そんなとき、私の前に現れたのが、あの辰己家の使用人を名乗る男性だった。

仕事帰り、男性は料亭の個室に私を招き、まるで接待でもするかのように豪勢な食事を振る舞って、涼晴の出自について聞かせてくれた。

涼晴が本当は名家の出身であること。医者になったのちに、離婚した母親の姓を名乗り、実家の事業や土地、金銭、あらゆる権利を放棄し、兄姉に譲ったこと。

「涼晴さんは結婚を考えている女性がいると、当主さまに漏らしておりました。そのお相手は藍葉さん、あなたであるという認識で間違いありませんか?」

涼晴は私の存在を父親に話してくれていたんだ。

その事実をうれしく感じながらも、彼の父親は私たちのお付き合いについてどう思っているのだろうと不安になり表情が暗くなった。

「……はい。涼晴さんとお付き合いしています」

「では話が早い。単刀直入に申し上げます。涼晴さんと別れてください」

なんとなく予想はしていたものの、あまりにもストレートに告げられたじろいでしまった。
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