秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
ちょうどいい口実ができて、私はここぞとばかりにふたりを置いて先を急ぐ。

しかし、兄は「自転車置いてくるから先にふたりで行っててくれ!」なんて言って地下駐輪場に走っていってしまった。

まさかこの状況でふたりきりになってしまうなんて最悪のパターンだ。仕方なく私たちはともにマンションのエントランスをくぐる。

セキュリティゲートを抜け、エレベーターホールに辿り着いたとき、涼晴が静かに口を開いた。

「茜音。今度ゆっくり、話がしたい」

ぎくりとして私は目を逸らす。彼は怒っているわけではないようだが、ふたりの間にはあきらかに張り詰めた空気が流れている。

涼晴は誰もいないエレベーターに乗り込むと、操作パネルの前に立ち、ベビーカーが乗り込むまで扉を開けていてくれた。

「ありがとう」

お礼を告げると、彼は私の目を見て端的に言い放つ。

「俺の電話番号は知っているよな。連絡、待ってる」

彼は私の住む十八階と、おそらく彼の新居なのであろう二十二階のボタンを押し扉を閉めた。

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