秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
返事をすることもままならず、エレベーターの真ん中で硬直する。

私の心中を代弁するかのように、晴馬が「ふぇぇええ……」と泣きそうな声をあげた。

「斗碧には、また今度お邪魔するって伝えておいてくれ。今日は帰国してきたばかりで、まだバタついているんだ」

「……わかったわ」

私が頷くと、彼は晴馬の横にしゃがみ込んで目線を合わせ、にっこりと笑顔を作った。

「晴馬くん。また今度遊ぼうな」

すると。晴馬の表情がみるみるうちに変化して、花が咲くようにぱぁっと明るい笑顔になった。

……嘘でしょう?

割とグズりやすい子で、一度泣きだしたら止まらないことが多いのに。こんなに都合よく笑ってくれるだなんて。

それとも。

本能的に、お父さんだってわかった……?

まさかね。

十八階に到着し、エレベーターのドアが開いた。涼晴は再び操作パネルの前に立ち、開くボタンを押していてくれる。

「……足元、気をつけて」

ちらりと目を向ければ、そこには穏やかな表情をした彼がいて、私の鼓動はドキリと高鳴った。

彼との甘い日々が恋しくなってしまいそうで怖い。

「……さよなら」
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