秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
サッと目を逸らし、私はエレベーターを降りた。ほどなくしてドアが閉まる。

すっかり元気になった晴馬が「あーうー」とご機嫌な声をあげていた。

「また……遊ぼう、か……」

玄関の鍵を開けながらひとりごちる。

もう二度と彼には会わないほうがいい。

そう思う反面、晴馬と遊んでくれたら、どんなにありがたいか――そんな思いが交錯して、複雑な気分になった。



「それにしても、こんなに早く涼晴が帰ってくるとは思わなかったな」

兄は家に帰って来てそうそう、うれしそうに話し出す。私は「そうだね」と気のない返事をした。

晴馬を兄に任せて、キッチンで夕食の準備を進める。晴馬の分の食事は冷凍の野菜を煮込んでスープを作り、つくね団子を温めた。

「俺はてっきり、長期の留学になると思っていたんだが」

「……そうね」

兄は晴馬を膝に載せ、かわいらしいクマが冒険する十五分番組を見て時間を潰していた。晴馬はじっとテレビを見つめている。

まだ長時間テレビを見続けられるほどの集中力はないけれど、十五分、しかも兄のお膝の上なら、なんとかグズらずにいてくれる。
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