秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
しかし、兄はふいっと目を逸らし「そりゃあ俺だって……」ともごもご言葉を濁らせた。

「茜音にちゃんとした旦那がいるなら、ここまで出しゃばらないけどさ」

私はハッとして声を詰まらせる。兄は夫の代わりのつもりで世話を焼こうとしてくれているのだろうか。

だとしたら、兄をここまで追い込んだのは私だ。

夫もいないのに子どもだけ産みたいだなんてワガママを言ってしまったから、結果的に彼に重荷を背負わせてしまった。

私がもう少ししっかりしていたら、兄はここまで過保護にならなかっただろうか。もっと自分のことに時間を割いて、とっくに結婚していたかもしれない。

「……あのね、お兄ちゃん。夫がいたとしても、ここまではしてくれないと思うわ」

困った顔でなだめながらも、心の中で謝罪する。迷惑をかけてごめんなさい、そしてありがとう。

私たちが黙り込むと、気を遣ったのか、涼晴が明るい口調で話し始めた。
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