偽りの夫婦
紫龍がショップに入店して来た。
「今日、イベント日なんでしょ?だから会いに来たよ!」
「でも…私、今日のこと言ってない。
どうして?」
邪魔にならないように、少し店の端に移動して話す。

「俺をナメないでね…!
俺は陽愛のこと、何でも知っておきたいんだから」
「ごめんなさい…黙ってて……。
でも…隠してたわけじゃなくて、紫龍が忙しいから迷惑かけたくなくて、それに……」

「その話は、今日家に帰ってからね……」
陽愛の耳元で囁いた。
「え……?」
「でも、嬉しいな!こんな風に陽愛に会えるの」
「うん」
「その服…」
「え?」
「今日着ていった服と違う……」
「今日はイベントだから、着替えたの。変?」
「胸元が開きすぎ。スカート丈も短い。今日は男も多いのに、ダメだよ…!こんな可愛い格好…俺以外に見せるなんて……。
今日は陽愛は大変だ……。
家に帰ってからが……楽しみだね…?」
凄まじい圧迫感。
黒く、重い紫龍の雰囲気。
陽愛は寒気を感じていた。

「陽愛~」
「え?寧々」
「ねぇ、旦那、ちゃんと呼んでんじゃん!紹介してよ!」
「え…あの…寧々、今は……」
「初めまして!陽愛と仲良くさせていただいてる、寧々でーす!
陽愛の旦那さんですよね?」
猫なで声を出しながら、陽愛と紫龍の間に割って入る、寧々。
「………」

「え━━?ちょっ…何…?」
今の紫龍はかなり機嫌が悪い。
さすがの寧々も紫龍の雰囲気に、寒気を感じる。
「………どけ…」
「え……」
「俺は…一度しか言わない…」
紫龍のどす黒い雰囲気と、恐ろしく低い声。
寧々はあまりの恐ろしさに身体が固まる。

「早くどかねぇと、次は手が出るぞ……。
俺は陽愛以外の人間には…容赦しない…」
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