内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「あなたまさか、結婚できるとでも思ってたの⁉︎ いくらなんでもそれは厚かましすぎるでしょう。天沢ホテルの次期社長とあのおんボロ案内所の地味な案内員が結婚なんてできるわけないじゃない! あなた真面目な顔して、頭の中お花畑なのね! ふふふ、おかしい!」
 そう言って奈々美は、心底おかしいというように声をあげて笑い出した。
 たしかに一般常識としてはそうなるのかもしれない。
 でもふたりの間には大和が生まれていて、それで……。
 祐奈は一生懸命頭の中で大和と一緒にいるときの大雅の笑顔を思い出そうと試みる。でもまったくうまくいかなかった。
 一方で黙り込んだままなにも反論しない祐奈に、痺れを切らしたように奈々美は笑うのをやめて、正面から祐奈を見据えて口を開いた。
「とにかく、私と彼の縁談はもう決まったことなの。ふたりだけの問題じゃないんだから」
 少し意味深なその言葉に、祐奈は小さく首を傾げた。
 結婚がふたりだけの問題じゃないとはいったいどういうことだろう。
「あなた本当にぼんやりなのね」
 奈々美がまた嘲笑う。そしてその言葉の意図するところを、得意げに説明しはじめた。
「私の父の銀行が宇月温泉買収の件でいったいいくら天沢ホテルに融資をしたと思ってるの? 今回の話にアスター銀行が乗ったのは、前提に私と彼の婚約があるからだってことくらいちょっと考えたらわかりそうなものだけど」
「……そんな……」
 思ってもみなかったその話に、祐奈は息を呑んで絶句した。ビジネス絡みのいわゆる政略結婚のようなものだろうか。
 結婚とは愛し合う者同士がするものだというのが常識の祐奈には想像もつかない話だった。
 でもそれは仕方がない。
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