内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 そもそも彼らと祐奈は住む世界が違うのだから。
「わかった? 大雅さんの気持ちがどうだとしてもこの結婚をやめるわけにはいかないのよ。もっとも彼だって有能な経営者なんだから、それくらいはわかっているはずだけど。たとえあなたにどんな風に言っていたとしても、所詮それは口先だけのこと。ふふふ、あなた何回騙されたら学習するの? 本当にぼんやりさんなのね。もしかして大雅さん、そこが気に入ってるのかしら」
 やっぱり、聞いちゃいけない話だったと、祐奈は目を閉じる。
 奈々美がそこへ追い討ちをかけた。
「ただの愛人だとしても、私はあなたなんて絶対に許さないから。私が父にひとこと言えば、天沢ホテルは大損害を被ることになるのよ。宇月温泉進出の話自体なくなってしまうかも。あなたその責任取れるの? 取れないでしょ? もう一度言うわ。今後一切、大雅さんには会わないで。……次はないから」
 そして祐奈の返事を待つことなく、派手な柄の傘を広げて、東家を出て行った。
 彼女の姿が消えて雨の音だけになった東家で、祐奈は立ち尽くしたまま、動くことができなかった。
 こんな話、知りたくはなかった。
 でも知らないでは済まされない話だった。
 今彼女が言ったことは、祐奈には想像もつかない別世界の出来事だけれど、少なくとも大雅の方は、間違いなくその世界の住人なのだから。
 祐奈が愛し信じた彼はもしかしたら、彼の中のほんの一部分なのかもしれない。
 偽られていたというよりは、ただその部分を見せてくれなかったというだけで……。
 雨が降り続く公園を、祐奈は暗い瞳でジッと見つめていた。

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