内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
『一階です』というアナウンスとともにエレベーターが停止する。音もなくゆっくり開くドアから、大雅はホールへ飛び出した。
 午後六時半を過ぎた一階のホールは、家路に就こうとする社員でザワザワと騒がしい。それを縫うようにして大雅はエントランスへ急いだ。
「ふ、副社長⁉︎」
 途中何人もの社員が、大雅に気が付いて驚きの表情を浮かべ声をあげている。
 副社長になってから大雅はずっと会社での振る舞いには、気を付けている。こんな風に余裕なく一階のホールを走り抜けるなど、あまり褒められたことではないのはわかっている。だが今はそんなことを言っていられない。
 祐奈は奈々美とともに外へ行ったという。まだその辺りにいるかもしれない。
「すまない、通してくれ」
 ぶつかりそうになった社員に謝罪しながら、大雅は彼らを追い越してゆく。
 そしてエントランスから夜の街へ駆け出した。
「祐奈!」
 携帯を握りしめて、大雅は彼女の名前を呼ぶ。
 金曜日の夜の街は、いつもより少し人通りが多い。
 彼女らしき人影は見あたらないけれど、どうかまだ近くにいてほしいと祈るような気持ちだった。
「祐奈!」
 そしてそのまま走りだす。
 彼女の名前を呼びながら。
 エレベーターの中で、大雅は祐奈の携帯にコールした。
 彼女は出なかった。
 もちろん気付かなかった可能性もある。
 だが奈々美に、電話に出ることもできないほどひどいことを言われたのかもしれないと思い、胸が締め付けられるように痛んだ。
 祐奈には、もう二度と絶対に、傷付いてほしくない。頭の中はそんな思いでいっぱいだった。
 重いものを抱えながら、強く生きてきた祐奈。
 多くを語らない彼女は、なにも知らずに君を愛しているなどと、呑気に囁いていた大雅のことをどう思っていたのだろう。
 馬鹿なやつだと思っていただろうか。
 やはり大和の父親には相応しくないと?
 父親同様、信用できないと思われていたのかもしれない。
 おそらく自分は、彼女の隣にいる資格すらないのだろう。
 だとしても。
 それでも!
 祐奈を幸せにするのは自分なのだ。
 彼女の艶のある真っ直ぐな髪、黒い濡れたような瞳、少し高い柔らかな声音、はにかむようなひかえめな笑顔も、なにもかもが大雅の心を捕らえて離さない。
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