内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 ぬけるような空の下、遥か向こう青い海の上を海鳥が飛んでいる。
 潮の香りの風に髪をなびかせて、祐奈は宇月の街を一望できる山の上に立っている。
 傍では大和を肩車した大雅が、眩しそうに目を細めていた。最近ますますやんちゃになってきた大和は、もうすっかりお父さんっ子で、今はご機嫌であっちこっちを指さして、きゃっきゃと声をあげていた。
 とりわけ、三人の足元に広がる工事現場でせっせと働く、ショベルカーやトラックがお気に入りのようだ。
「ぶるぶるー、がしゃーがしゃー」と、一生懸命大雅に話をしている。
 大雅がそれに嬉しそうに応えていた。
「そうだ。ショベルカーががんばってくれている。もうすぐで完成するからな。そしたら皆で泊まりに来よう」
 祐奈と大雅が心を通わせあったあの夜から半年がすぎたこの日、宇月に新しくオープンする別館天沢の工事現場に三人はやってきた。
 天沢ホテルの宇月温泉進出計画はスムーズにことが進み、今彼が言ったとおり、もう建物はできあがっている。今はショベルカーが庭を造成している段階で、もはや完成間近だった。
 大雅のプロポーズに結菜が頷いた次の日の朝、ふたりは大雅の実家へ向かった。
 大雅の父親天沢宗久に婚約の報告するためである。
 宗久は祐奈を見るなり、床に膝から崩れ落ちた。
『申し訳なかった……』
 まだなにも伝えていないのに、そう言って頭を下げる姿に祐奈の胸は締め付けられた。
 彼もまた祐奈と同じように父の死に苦しめられてきたのだ。もう何年も会っていなかったのに、ひと目見て、祐奈を父秀明の娘だとわかるほどに。
『謝らないでください。私の方こそ、ずっとずっと誤解していたんです』
 そう言って思わず取った手の温もりに、祐奈は心が晴れてゆくような心地がした。
 父の死を完全に乗り越えられた。そう思った瞬間だった。
 そうやってふたりが和解した後、大雅が祐奈と自分の関係を説明した。
 婚約をしたこと、実はすでに子供がいること。
 それに宗久は、涙を流して喜んだ。
『秀明も喜んでいるだろう、ありがたいことだ……』
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