内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 この半年は、結婚式までの準備期間として、祐奈と大和は宇月にいたまま、大雅が宇月へ頻繁にやってきている。後一カ月して、祐奈の役場の仕事の契約が切れたら、祐奈は大和とふたり大雅の住む東京へ引っ越すことになっていた。
「それにしても、無事にオープンできそうで安心したよ」
 大雅がホッと息を吐く。そしてやや大袈裟にため息をついた。
「なにしろこの件に関しては親父からのプレッシャーがきつかったからな……。もし失敗したら勘当される勢いだった。こんなに気合が入ったプロジェクトは、はじめてだったよ」
 やれやれというようにため息をつく大雅に、祐奈はくすくす笑いだす。
 いつかの夜に、母が言っていたこと、彼の父が大雅を厳しく育てているという話は本当だったようだ。
 宗久は、祐奈と大和にとっては今やすっかり優しいおじいちゃんだ。
 だが、巨大な企業を任せるべき息子に見せる顔は、やはり全然違うようだ。
『今のところお前した仕事の中で私が褒められるのは、祐奈さんを妻にできたことくらいだな』
 結納の時にそう言われて、大雅が頭をかいていたのが記憶に新しい。
 そんな大雅も祐奈の目には新鮮に映ったのだが。
 とはいえ、宇月にできる別館天沢の出来には満足しているようで、たびたび父の墓を訪れて『いいものができそうだ』と報告をしている。
 親友との夢が叶うことを心から喜んでいるその姿が、在りし日の父と重なって見えて、祐奈と母寛子は涙した。
 夏のシーズンに向けて別館天沢が無事オープンにこぎつけたら、秋にはふたり結婚式を挙げることになっている。
「唯一心配だったのが、雇用だったんだけど、いい人材が集まりそうでよかったよ」
 青い空をバックにそう言って、大雅が同意を求めるように祐奈を見る。
 祐奈はそれに微妙な気持ちで頷いた。
 天沢ホテルは地元から従業員を雇い入れる方式を取っている。それはもちろん地元にとってありがたいことなのだが、今回に関しては少し不安視されていた。
 宇月は若い世代の人口が少ないからだ。
 だが蓋を開けてみれば、天沢ホテルの採用試験には意外とたくさんの人材が集まったのである。
 そしてその中には、役場の嘱託職員も複数いた。
 役場の嘱託職員は期限付きだからずっと働けるわけはない。給料も上がらないから、安定して働き続けられる天沢ホテルなら安心だと皆が考えるのは当然だ。
 でもそれだけではないはずだ、というのが祐奈の案内所の同僚、真由香の意見だった。
『祐奈さん、結婚のこと絶対に職場で言っちゃいけませんよ!』
 いわく、採用が決まったのは観光課の女性職員たち。
 彼女たちは皆、宇月をよく知るエキスパートだから、もちろん天沢ホテルにとっては心強い存在には違いないのだけれど……。
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