【完】片手間にキスをしないで


──────……


同じ小学校の1学年下の、人一倍、駆け足で成長した女の子。


名札を付ける習慣は学年が上がるほど自然消滅して。でも、彼女に限ってはそうではなかった。



『うわっ。西名(にしな)お前、マジであいつから貰ったのかよ』

『は、マジで?! バレンタイン?!』

『つーか、あいつ女だったのかよ』

『お前らひっどいなぁ~、俺は貰えんならギリ女子の泉沢でもオッケーだわ』

『いやいや、それオメェもクソだろ』


生憎の氷点下。首元の心もとなさに気づき、マフラーを取りに引き返した放課後。廊下に響き渡る下世話な会話。


『あーあ。どうしよっかなマジで。うちのペットに食わせよっかな~』


そして、雑巾のようにつままれる藍色のリボン。


甲高い笑い声とラッピングを横目に捉えながらも、奈央はただ通り過ぎた。

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