【完】片手間にキスをしないで
『えっ、それあなたの、』
『はい、完成。食ってみな』
カラカラ、と半分以上なくなったチョコレートの箱を揺らすと、彼女は瞬きを繰り返す。
『え……っ、んっ?!』
しかし、アイスを口に溶かした瞬間、その瞳はビー玉のように光を反射した。
『お、おいしいっ……!』
『だろ。クッキークリームよりはっきりしてる、チョコチップ的な食感が俺は好きだ』
『ん~~っ、おいしい!!』
あまりにも連呼するので、店主に『一応、飲食禁止だからね』とイートインスペースへ促され、彼女は友人の元へと帰っていった。
だから、その直前だったのだろう。
『残り物には福があるって、本当だったんだ。……ありがとう』
振り向いた彼女の綻んだ表情に、不覚にも時が止まったように感じたのは。
『……どこが〝ギリ女子〟だよ』
ほんのり涙目で、頬を染めながら細められた瞳。行儀悪く、スプーンを咥えたまま持ち上がった口角が、頭から離れない。