【完】片手間にキスをしないで
トサッ───。
響いたのは、地面に箱が落ちた音。解かれたリボンは砂埃に舞い、立ち竦んだ彼女の足元を撫でた。
『……ッ?!』
自分が落とした箱の中身を見下ろし、彼女は声にならない声で息を閉ざす。
なんだ……?
遠目に見ていた奈央には、しばらく中身の正体が分からなかった。高笑いを放つ男の、あの言葉を聞くまでは。
『おい、落とすなよ。可哀想じゃん』
『……?』
『言ったじゃん、全部食べたって。食べてくれたの、こいつだよ』
俺のペットの、クワガタちゃん───
続けられた言葉に、彼女の膝は力を失くす。同時に下がった視線を見下ろすように、奴らは囲んだ。
『何お前。本気で西名が食ったと思ったわけ?おめでたすぎんだろ』
『そんな図体してるくせに、バレンタインとか……少しは自覚しろよ。女子として見られてないって』
『まぁでも良くね?西名のペットは美味しくいただいてくれたんだろ?』