【完】片手間にキスをしないで


『なんなんだよお前ら……ああ、上級生ですか?』


夏杏耶の肩に足を乗せたまま、西名はランドセルを放って言う。そして、蹴りを入れられ伸びた仲間を一瞥した。


その横で、ペットだと謳っていたクワガタも同様に伸びていた。


『退けろよ。その足』

『は?』

『きたねぇから、退けろ』


忠告のつもりだったのか。もし退けたら、(ゆる)すつもりだったのか。応じないと読んでいたのか。


それは今でも解らない。


もしかしたら夏杏耶の手前、多少〝手順〟を踏んでやろうと思っていただけかもしれない。


無闇に暴力を振るう訳ではないと、知ってほしかった。……とどのつまり、嫌われたくなかったのだろう。


『そっちこそ、邪魔すんじゃねぇよ……!!』


だから、向こうから拳を振り上げて来たとき、俺は感謝を述べたくなったものだ。


心置きなく怒りを振るわせてくれて、ありがとう、と。

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