【完】片手間にキスをしないで


──────……


「……謎です」

「は?」

「どうしてそこまで溺愛してるのに、ああいう態度になるんすか?」


頬杖をつきながら、空になったカップの縁をなぞる静。〝ああいう〟と強調された言葉に、奈央は視線を逸らした。


「……お前に関係ねぇだろ」

「え……もしかして、ただ照れくさいだけですか?」

「はぁ───?」


照れくさい?ふざけるな……んなことあってたまるか。


「じゃあ()えるんですか?面と向かって『好きだ』って」

「……告える」

「無理ですね」

「……」


随分と信用がないらしい。巧く反論する言葉も見当たらないまま、奈央は立ち上がった。


「そろそろ行く」

「……ですね」


窓の向こう、傾いた日が少しだけ目を眩ませる。


「……なんだ、あれ」


掌でその光をかわすと、同じフロアの図書館前に人が倒れているのが見えた。

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