【完】片手間にキスをしないで
「う、うぅん……」
呻く夏杏耶の後ろで、鮎世が肩を叩く。
その後、任せて、と言わんばかりに頷いた彼によって、前者は「鮎世の昔の悪い仲間に絡まれて」ということに収まった。
「ふぅん。なるほどねぇ。やっぱりワルだったんだ、鮎世くん」
「それなりにねー」
奈央のことは伏せ、うまく交わす鮎世。
代わりに話してくれてよかった……私じゃあ絶対にボロがでてたよ……。と、胸を撫で下ろしながら校門をくぐる。
このまま後者の方は忘れてくれれば良かったのだけど、教室に場所を変えて、話は続行された。
「あの……ここじゃあ皆に聞かれないかな?」
「誰も聞き耳立てたりしてないって。ほら、夏休み前でみんな浮かれてるし」
顔を軽く覆いながら、夏杏耶は教室内を見渡す。
……たしかに。テストも終わって、みんなそれぞれ騒いでる。来週から午前授業になるから、無理もないけれど。