【完】片手間にキスをしないで
……危ない危ない。余計なことを口走ってしまうところだった。
夏杏耶はふぅ、と滲んだ汗を拭いながら、窓から吹き込む風に顔を晒す。
それはもう大分湿り気を含んでいて、熱を冷ます役には及ばなかった。
「カーヤちゃん。率直なところ、言ってもいい?」
「……うん」
あ、来る。
「避けてる……というより、私は〝遠ざけてる〟って感じがする」
「遠ざけてる……?」
美々の容赦のない一撃が来る、と思っていたのに、予想していた言葉とは少し違って、夏杏耶は思わず復唱した。
「俺も、美々ちゃんと同じ意見」
「鮎世……」
「あれで居て奈央はさ、夏杏耶ちゃんのこと、いつも一番に考えてるから」
昔からそうだよ───そう続けた鮎世に、すかさず美々は「え、昔から知り合いなの?」と突っ込む。
しばらくすると話題はそちらにシフトしたので、夏杏耶はこっそり息をついた。
ブブブッ。
そして、2人が会話を繰り広げる中、メッセージを受信した。
「え……奈央クン?」