【完】片手間にキスをしないで


──────……


「奈央クン」

「ああ……分かってる」


床に就く前。豆電球がチラチラと不安定な影をつくるなか、夏杏耶は頬に触れられる。


少し伸びた爪で顎のラインをなぞられるのと同時、肩がピクリと跳ねる。


瞳孔が開ききっていないなか、眠気を誘う吐息だけが彼の居場所を教える。


「目、閉じとけ」

「え……なんで開いてるってわかるの?暗いのに」

「さぁな」


ふっ、と零される息がくすぐったくて、途端に目を瞑る。途端に、後ろ首へ手を添えられる。


自然とかかとが浮いたのを見兼ねて、彼は腰にも手を添えた。


そして、文字通りキスを落とした。


「……ん」


……こんなの、勘違いしてしまう。


唇を控えめに覆うような、1秒にも満たない口づけに、夏杏耶は心臓を震わせた。


唇と同時に離れていく彼の温度が、今までで1番、名残惜しかった。


「……調子狂うな。やっぱ」

「え?」

「いや……なんでもない。おやすみ」

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